プロ野球のチーム名から企業名をはずせ、という議論は以前から有り続ける問題で、今回でも1企業のオーナーシップが問題なので、複数企業の共同所有として、影響を分散し、さらには球団名を地名に、という事を言う方がいます。
ちょっと待った。
現状、企業名を球団名に付ける理由としては、赤字を広告宣伝費名目で負担するために、企業名がユニフォームだけではなく、スポーツ欄に掲載されるということから、数十億の支出が出来る、という事情があります。ただし、本業が赤字転落しながら継続してこのような支出を続けたりすることも企業会計上問題になりましょう。
また、広告宣伝費名目であるので、損金支出(利益から控除した金額に課税)のですが、これが地域名のみになると、ユニフォームへの企業名掲出では、せいぜい5億円(*)しか損金支出できず、あとは法人税を支払った後の益金から支出しないといけなくなります。要するに、30億だと、5億+25億に法人税が15億程度必要となり、支出が5割増えることになります。そこまで各企業懐は深くありませんでしょう。
(*)野球のヘルメットスポンサーが1億円、通常のサッカーJ1での胸スポンサーが1億~2億。試合数を考慮したが、通常のこの種の公表額は実際の7割程度と言われている点は考慮せず。
どちらにせよ、チーム名から企業名を外すためには、赤字を圧縮する必要がある訳ですが、支出額を抑えると言っても、サッカーは遠征がJ1で16試合なのに、野球は67~70試合+地方主催。パは阪神間でもホテル宿泊しているようですし、連戦であることも遠征費の軽減もなかなかに難しいなど、減らすことのできる支出自体かなり少ないでしょう。ウェーバー制ドラフト、サラリーキャップ、放映権収入の分配などで収入・支出のある程度の公平化も、支出圧縮、収入偏在の公平化という点で、このようなことを行うにも必要です。
またメディアにしても、スポーツニュースでの無料放映の条件に、セパ一定時間の放映などの条件を付ければ、報道の公平化にも繋がりましょうが、実際にはそんなことは、放映権の集中管理すら考えていない機構にできるでしょうか。
このように、これらは簡単なことではありませんし、今回の中日・広島のオーナーの発言は、これらには一切触れておらず、交流試合数試合でごまかすおつもり。こんなんではもちろん、球団名から企業名を外すことなどできやしませんし、2リーグが継続した場合でも、パの露出度には差がついたままで、放映権の規制さえできない機構は何もできやしないでしょう。
どっちにしても、根本的な体制変革が重要で、「12球団維持」を訴える方は、これらの問題を耳障りの良い言葉でお隠しになっていることをお忘れにならないでいただきたい、と思います。