初戦、5回裏1死1走リナレス。打者谷繁の当たりは、なんとホームベース右前角で停止。それを処理しようとして交錯した、捕手野田と打者走者谷繁。野田は捕球した球を二塁に送球。二審はアウトをコールする。一塁へ送球。一審もアウトをコールする…チェンジ? 落合監督は抗議します。

その前に主審は捕球時に野田が谷繁の足に当たる直前の球を掴み、それが足に当たったとアウトをコールしていたのです。実際谷繁もおかしいなと思いながら一塁に進んでいたように見えました。実際その通りで判定が「覆ります」。いや、正確には抗議ではなく、「プレーの流れを確認して」、判定を整理したに過ぎません。この種のことで「覆る」という言い方をすることが、一般の審判不信に繋がるのです。そして、伊東監督の45分以上の抗議…。2-0でリードしている、初戦という状況でのこの抗議…。

実際、これが打球が先に足に当たっていれば、守備妨害で一走は元の塁に戻される訳ですが、このプレーではその判断は球審に取られていませんし、実際ビデオ上でも、球審の判断が正しいように見えました。また、角度的に主審としては難しい判断を要するプレーで、この辺りはよく見ていたと思います。ただ、問題が有ったとすれば、フェアのコールに時間がかかりすぎ、アウトのコールをした、その流れが遅すぎました。それが二審の「フォースプレーアウト」の動作を産み、誤解を広げたのです。実際、場内放送で、橘高主審は二審の動作の誤りを認める「異例の場内放送」を行い、試合を再開させました。

しかし、伊東監督の姿勢は褒めるべきものではありません。大体、確認事項として5分以上の抗議は公認野球規則上、没収試合相当の事項となっています。(球審が遅延が不可避と認めた場合は除くという事項はありますが)また、このリードの状況ではそれほど時間をかけるほどのプレーではないように見え、タイミングとしても問題があるように思われました。また、審判が現在のプロ野球の状況を考え、異例の「誤りを認める」声明を出したにもかかわらず、伊東監督の行動は、それを全く無視しているという逆転現象が生じたとも言えましょう。野球ファンはともかく、一般の人にどれだけプレー上に起こったこの行動が理解できるのでしょうか、という観点を、今の野球は考える必要がある筈なのですが。

その「報い」は、月曜に数字となって現れるでしょう。裏番組が弱いとは言え、フジを利する結果になったのではないか、と推測するのですが。

#以上 2004/10/16 21:05 記載。以下2004/10/16 22:26追記

結果的にこの抗議は、1死一三塁での、一走カブレラ選手の二ゴロの「故意の守備妨害」による「認定ダブルプレー」ということを招きました。せっかくの投手戦を壊したこの2つの「プレー」は、断罪されなければならないでしょう。21:00からNHKでイチロー選手のMLB最多安打記録達成に関する特番もあったことですし。

でも、このNHKの編成上の意図も問題ありです。まあ、メディアに「日本のプロ野球」をどうきちんとした形で盛り上げようという頭なんて全くないことを示唆する事象でもありました。

#2004/10/17 00:16追記

球審は観客に説明をすべき、という意見がありますが、そもそもMLB等ではそういう説明に遭遇したことがありません。現在のNPBの審判の場内説明放送は、どちらかと言えばNFLのシステムに見習ったものと言えましょう。逆に、何故説明が不要であるかと言えば、そんなに長い抗議があり得ないということの方が大きいと思います。あえてするとしても、再開理由を今回の場合であれば伊東監督へ、ではなく、観衆に場内放送を1回すれば「終わり」の事であると思います。

#2004/10/17 21:50追記

TB – シャカイノマド 最低の試合 追加。

観点としては同一であると思いましたので。

あと、プレーに関しては交錯後の「空タッチ」を指摘する人が多いのですが、私には、その前の交錯時点でタッグプレーが成立していると感じました。タッグプレーとは「アウトにするためボール(ボールの入ったグラブを含む)を走者に触れさせる」ことを指します。この場合はその時点で捕手がボールを走者に触れさせており、タッグプレーが完成していると見たことを付記させていただきます。

#2004/10/17 15:20追記
TB – 駆り立てるのは野心と欲望、横たわるのは犬と豚 いいにくいんですけどね

やぎさんの記事へのTBを追加。
「抗議」するにも方法があるでしょう、と。子供みたいだったと思いますよ。私も。
一部の「ファン」がもっと子供みたいなエントリー書いているのを見ると、審判のレベルと観客(プレー)Iのレベルは相似する、とサッカーでよく言われる事を思い出します。

でも、私なら、右打席を出たところで捕手の捕球と交錯しそうになり、回避動作をとらなかった谷繁さんに守備妨害を宣告し、二死一塁で再開させたでしょう。その方が合理的ですけど、そんな事に触れたエントリーもない、というのがちょっとね、と感じました。

投稿者 wolfy

「球趣を削いだ抗議。」に11件のコメントがあります
  1. 私はボールが足に当たった云々…ではなく、野田がボールを拾って走り出す谷繁の背中に、ボールを持った右手でタッチする仕草をした(空タッチ)ことに対し、主審がタッチを認めてアウトの宣告をした(実質的には誤審)ように見えたのですが。

    審判のコールは絶対である、という前提の場合、この時点で打者谷繁は(実質的には空タッチであるが)アウト。2塁ではタッチプレーが必要になり、タッチプレーをしていないため2塁は生還。2死2塁で続行、という形になります(実際そうなりましたし)
    この場合2塁塁審のフォースアウト宣告は明らかに誤りである(あの距離で空タッチを見抜いていたとは思えない・笑)ため、あのような誤審を認める場内放送になったものと思われます。

  2. (続き)

    審判団がどう両者に説明をしたのかは知る所ではありません(それこそマイク持ってやりとりすれば面白かったのに…)が、伊東監督の印象としては、「落合監督が抗議をしたことで、審判団が翻意して裁定を覆した」という感があったのかもしれません。
    TVを見ていた感ではわかりづらかったのですが、プレー後、審判団がそのまま引き上げようとしていたのかどうか。そうであれば、伊東監督の審判団に対する不信感には同情できる部分もあります。

  3. モニターを見て判断できればいいと思うんですけどね…。
    ただ、単純にプレー自体を見ると普通のゲッツーでチェンジですし、これまたややこしいことになりますが。
    伊東監督の強情な抗議もトータルで見るとやり過ぎな感もありましたが、どちらにしても審判団の弱い態度(ミスをしたことの引け目もあったかもしれませんが)も長い抗議の一因だと思います。

    「これで続けるから、5分以内に出ないと没収にするよ」(もちろんブラフですが)

    と言えればいいのですが、そう簡単にもいかないんでしょうねぇ…。

    長々とすみません(汗)

  4. >rossoneroさん
    実際には、橘高主審のアウトのコールが、送球が終わって球が1/3進んだところで行われていて、それを2塁塁審が観ながら判断することは難しいと思いました。主審のコールはどちらかと言えば、フェアより、アウトのコールを先に行うべきであったことの方が重要であったと思います。
    日本の審判は、自分に引け目があると、このように「譲歩」してしまうのが、一番ダメな点であろうと思います。毅然とした態度がほとんどないし、判定も「帳尻合わせ」が見え見えなものもありますので、信用されないのでしょう。
    没収試合は規則であるので、ということは審判団も提示すべきでしょうね、やっぱり。

  5. まあ、現実的な対応として、全試合がCSを含め中継されている以上、NFLのような「チャレンジ」システムがあってもいいとは思います。NFLの場合、1試合に1回、ベンチから赤いタオルが投げられた場合、その直前のプレーを審判団が2分以内にビデオで見直し、再判定します。成功ならば判定が変わり、失敗であればタイムアウトを1回喪失します。ただ、試合終了2分前を切った場合、利用できない決まりとなっています。
    でも野球で行った場合、投手を交代させるとか、代償になるものがないことが問題になりそうですね。そうでないと濫用されますから。
    そういうシステムが無い限りは、やはり審判団の判断を最優先するしかないように思いますね。

  6. NFLの「チャレンジ」システムなるものは初めて知りました。
    アメフトは見ないもので…。そういう規則があるんですね。

    ビデオ判定も含めて、なかなか野球への導入は難しいでしょうね。
    確かに濫用防止のための代償が無いですしね。

    審判団が批判を浴びようとも、「俺がルールだ。文句言うな」
    と強い態度でできればいいのですがね。
    「強く主張したもの勝ち」のアメリカ的な考え方と、
    「なるべく妥結する」という日本的な考え方の相違であると言えるかも。
    これは見る方の意識も後者が強いでしょうから、
    なかなか簡単に前者でやるのも難しいのでしょうかね…。

  7. チャレンジシステムは今年からルールが少々変わったようです。詳細はここに詳しいので、ご覧下さい。チャレンジの成功率は50/50という感じで、結構試合の流れを左右するプレーで多く使い、成功させたチームが、やはり優勝に絡んでくるのが面白くあります。

    NHLはゴールに関するパックのゴールイン/アウトのみビデオリプレイが行われています。これは事実上義務的に行われています。

    やっぱり強い姿勢というのは必要ですよね。イチローさんでもありましたけど、野球には誤審はある程度ついて回るのですからね。

  8. 日本シリーズ第一戦にみる試合の流れ

    今日の日本シリーズ第一戦、結果は20で西武ライオンズが初戦を制したが審判の誤審により49分近い中断がありました。
    すぐに得点に結びつくわけでもないひとつのプレーと考えればそこまでこだわる場面ではないが、野球の場合ひとつのプレーで試合の流れが大きく変わってしまうことがあります。
    特に日本シリーズのような短期決戦では流れをつかんだチームが一気にシリーズを制してしまうこともよくあることです。今日の試合でも両監督の審判の誤審に対して試合の流れのつかみ方へのこだわりの一面が見られました。
    これから数試合つづ…

  9. 昨日のニュースと本日のスポーツ紙をみて幻滅しました。
    審判を悪く言えばいいような風潮です。
    それだけに、このBlogにはほっとしました。
    主審のジャッジが根本にあるので、二塁塁審の判定は訂正可能な範囲です。
    メディアはきちんと伝えてほしいです。

  10. 僕もちょっと音声の無い状態でテレビ観戦していたので、谷繁が守備妨害になったんだと思ってました。

  11. >やぎさん
    視聴率のエントリーを別個に起こしましたが、結局この国の一般の人は、野球自体より「揉め事」の方が好きなようです。だからそういう論調ばかりになるんですね。
    その内プロレスのWWEのようになっていくのかも知れませんと皮肉をひとつ。

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