FIFAワールドカップ
スカパー中継・2010/6/19「オランダ×日本」(1-0)
試合終了後のオシム氏のコメント(書き起こし)
(この試合の感想を聞かせて下さい : 倉敷保雄さん)
「まあ、どういう試合で負けてはいけないか、どのように負けてはいけないかという教科書のような試合でした。まあ、教科書のような試合でしたから、ここから学ぶ事がありますね。敗北から学ぶという風に言っていますけど、敗北から学んでいるだけでは進歩はあまり無い訳ですね。残念です。
残念だというのは、つまりですね、今日のオランダは本来のオランダではないチームだったと。ですからそれを利用したかったんですけども、修正すべき点があります。ひとつはですね、年齢やあるいは経験のあるなしに関わらず、どんな時でも選手は進歩する事が出来るんだということ。日本チーム今日の試合では守備は規律を守って戦うことが出来ました。そして、オランダ相手に近い位置でプレッシャーをかけることは、それには成功しました。しかし失点してしまった。その理由は何でしょうか。よく分析するべきですね。
それは何か、ひとつはオランダが主導権を後半の立ち上がり持ってしまったということ。それは何故かというと、後半日本が少し怖がってしまった、そして簡単に相手ボールにしてしまった。あまりにも簡単に中盤でボールを失う機会が増えてしまった。そこからピンチが生まれました。
そこ、それから、これはサッカーというのは団体競技であって、個人競技ではないんだと言う事をもう一度念を押す必要のある選手がいましたね。もちろん、自分で得点をあげることが出来ればうれしい事でしょう。しかし、自分だけが得点を決める権利があるわけではないのです。集団競技なのですからよく考えて欲しかった。まあ、ですから、その中、日本の中に、エゴイストと言われても仕方の無い選手がいたという印象は否定できませんね。
本田選手はカメルーン戦では非常に良いプレーをしました。そこで、今日の試合は力んだのかもしれませんね、若いために。そこでプレーテンポを落としてしまいました、残念ながら。つまり、個人で大きなオランダのディフェンダーを相手にレスリングを取る時間が長くなってしまったということです。まあ、日本にも相撲という競技があることは知っていますけれども、サッカーは相撲ではありません。押し出しという決まり手はサッカーにはありません。カメルーン戦では適切なプレーをしていたと思うんですけれども、今日のキープ時間の長さというのは、逆に、日本の為にはならなかったように思います。
大久保選手については、シュート以外にももっと言うべき点はありますね。大久保選手がゴールを決めたかったという気持ちは本当によく分かりますけれども、彼よりももっと有利な体勢でシュートが打てる味方がすぐ近くにいたということに気が付かなかったのでしょうか。
まあそれにしても、前半は規律をもっていいプレーをしたと思います。オランダにまともなチャンスをほとんど与えませんでしたね、前半は。しかし後半の立ち上がり、そういうプレーが出来ませんでした。今日の前半のようなプレーが出来ていたら後半の立ち上がり、シュナイダーにああいうシュート(=失点)を打たせることはなかったと思います。もっと近い位置でプレッシャーをかけることが…シュナイダーに(の)シュートをブロックすることは出来たと思います。それは、何故許してしまったのかということは阿部・中澤・闘莉王の3選手に、その時自分のポジションがどこだったのかということをもう1回考え直して欲しいと思います。非常に残念です。途中までプラン通りに進んだいい試合だったのに、最後までそれを実行することが出来なかったという意味で非常に残念です。しかも、格上の相手に対してプレーをし続けることが(出来る)、チャンスはあった訳です。
今日の試合に関して言えばオランダはそんなにたいしたチームだったとは思いません。まあ、日本の選手だけではなくてサポーターや、あるいは日本のマスコミの皆さんが、オランダが強いぞという前評判ですね、そういうものに先入観を持ってしまったのではないでしょうか。それにロッベンは今日は出ませんでしたね。ロッベンが出てきてそして少し怖がるというのならわかりますけれども、それ以外の選手は今日はリスペクトし過ぎるべきでは無かった、そういう相手でした。
ですから今日、本田のプレー時間が少し長過ぎたような気がします。本田の代わりにですね、早い時間にもっとフレッシュでスピードのある選手を投入する交代策も可能だったと思います。なぜならば、オランダの2ストッパーですね、それが大きくて遅いタイプの選手だったからです。オランダの弱点はセンターバックでした。それを、弱点を突くことが出来れば、チャンスは増えたんですけど、それが残念ながら出来ませんでした。
選手たち、それから視聴者のみなさん、もう一度この試合の録画をですね、ご覧になるべきです。分析をしてください。それから、また残念がって下さい。あの時にこの、これをすればチャンスがあったのにと。ですから今日は目の前にチャンスがあったのに、モノにすることが出来なかったという試合でした。しかしまだ終わったわけではありません。まあ私も残念ですけれども、残念がるだけでは進歩はありません。まあ、個人的にですね、いろいろアドバイスを与えたいような気はしますけれども、この場ではやめておきましょう。誰が悪いとかそういうものではないですよ。」
(デンマーク戦での準備に一番大事なことを何か教えて下さい : 倉敷保雄さん)
「ひとつはあの、今日のデンマークの試合を見ることです。よく観察してください、デンマークを。そして第1戦でもデンマークは規律あるプレーを続けることは出来ましたが、日本も今日の試合の前半までは、しっかり規律を守ってプレ-が出来ました。それをデンマーク戦でも今日の前半のようなプレーを続けることが出来れば、デンマークがどうしていいのか判らないところに追い込むことが出来ます。まず今日の試合を見ること、それから疲れを取ること、ゆっくり休むこと、そして力を取り戻してもう1試合あるぞと、フィジカル的な問題は無いはずですから、メンタルな準備をすべきです。メンタルな準備を入念にすることが大事です。
デンマーク戦、大きなチャレンジになりますけれども、それは出来る能力があると、日本代表の選手達はあると思っています。第3戦というのはデンマークに対する情報はもう揃っている訳ですから、対策も取りやすい訳ですね、デンマークがどんなチームかというのは分析した上で、それを、規律を守って、そして走力で上回って走り勝つということが出来れば。もう日本代表がリスペクトし過ぎる相手というのは、このワールドカップにはいないということが判りましたね。今日のオランダだってたいしたことはありませんでした。今日の試合で保つべきは自信です。自信を失わないで下さい。自分自身をリスペクトしてください。もちろん天狗になるべきではありませんけれども、今日の試合はガッカリする必要は無いゲームです。
小野さん、残念でしたね」
(ええ、なんとかね、次、でも次へ向けて頑張って欲しいですね。なんとか決勝トーナメントに行って貰いたいと思っています。 : 小野剛さん)
「まあ3試合目が終わった後に笑っていられればいいと思います。」
(ええ、オシムさんの日本代表への愛情を強く感じました。一緒に、あの、応援したいと思っています。 : 小野剛さん)
「いや、しかし愛というものは儚いものですからね。毎日毎日世話をしないと、愛というのは長続きしないものです。まあ、簡単に消えてしまうような愛ならばたいしたものでは無いんです。まあ、花に水をやるように、毎日毎日努力をしないと愛情も育ちません。サッカーも同じです。次の試合グッドラックというように申し上げたいです」
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(参考)
>6/14のオランダ戦を見ての(6/19試合前の)コメント
「アジアのチームがヨーロッパや南米のチームと互角に戦うポテンシャルはある。やっているのは同じサッカーだ。イングランドとクリケットをやるわけではない。日本は格上のオランダと戦う。韓国の試合から学ぶべきは、もっと勇気をもって戦うことだ。」
>6/19の試合前のTwitter
「日本はカウンターが得意な選手がいないのは気になるが」
>6/19のハーフのコメント:前半ハイライト放送中(Twitter)
「ハイライトで映すようなシーンはなかったじゃないか」(笑)