昨日ツイッターで某市のミニバスの方が、プレシーズンでどうせ観客が入らないのだから顔見せで2階席を無料にするなど間口を下げればいい、ということを書いていて、その上でだから間口が広がらない、昨年は無料招待券があったから話題になったけど、今年はないから話題にもならない、と書いていたのを見て、ん?と思った訳です。
まあツイッター上の記載ってのはとっちらかっちゃうので、自分の考えをここでまとめておこうと思います。もちろん自分の個人の私見ですので、ということをお断りしておいきます。
超長文ですので、おつきあいいただける方は…
もちろん、自分は招待券に100%反対ではないですけど、招待券になれてしまうとそれが習慣になってしまうのが怖い、と思っています。実際、某チームの住吉では、客席を埋めるために反復的に招待券を周囲に撒いてしまったものだから、(会場周辺では)チケットが売れなくなった、という話を耳にしています。
実際、過去とある会場で、とあるミニバス関係者がbjの試合会場で、「関係者やのになんで金はらわなあかんの? もう2度と来ない」と息巻いているのも見たことがあります。その時点でbjは協会傘下ではなかったのですが、そういう方もいらっしゃるようです。
この点での主張は大きく2つのポイントがあって
①招待券を如何に効率的に使うか
②満員感というものを維持するのがどの程度大事か
という2点です。
1.招待券自体について
a.配布
招待券の使い方で知られるのはJリーグアルビレックス新潟で、配布の仕方に特長があったのは
1)町会単位でターゲットを絞って招待券を配布した
2)招待券を使うか電話で名前を含め聞き取り送付して、使ったかどうか、試合の印象はどうだったか1人1人に電話でボランティアが「顧客満足度調査」を実行した。
などの方法をきめ細かに取っていました。SRIの社長さんが以前講演で、「その商店街では熱狂的に応援されるようなチームのあり方があって良い」等の、メジャーではないスポーツの運営の仕方をされていたのが興味深かったのですが(ただ、日本ではアメリカ型のプロスポーツは日本では無理という結論も仰っていましたが)、町会単位であると話題にし易いなどの利点もあり、入場券の購入に繋がったということがあります。
ただ、Jリーグの場合は興行場所がほぼ特定されていますが、バスケットの場合ごく一部のチームを除いて、その会場では1,2週の開催しかない場合も多く、招待券を配布しても次の開催までの期間が長く、興味が持続しにくい、結果次の招待券に依存する、ともなりかねません。日本の会場事情では難しい面が実は多いのですが、少なくとも半分の主催試合を開催するホームアリーナをどう持つか、ということも重要です。
つまり、最初の間口を広げるための招待券と、反復使用で単純に売り上げに繋がらない招待券とは質が違います。ということ、アリーナが固定しない現状では、コントロールも難しいという点があります。
b.スポンサード
実際一部チームではやっていますが、特定スポンサーのプログラムとしてチケットを買い上げてもらい提供するという方法があります。
方法論としては、スポンサーパッケージの廉価タイプのものとして、そうしたジュニアなどの団体向けのチケットを購入してもらう、というオプションもあります。とあるチームの場合1階席自由は大人2千円、子供千円ですが、例えば20人子供+引率の大人4名でパッケージにします。チケットは1割引で2万5千円程度。2つパックして5万円。そして例えばボードをもってもらったり、場内アナウンスをセットします。
「今回は株式会社(なになに)のご協賛のキッズケアプログラム、来場いただいたのは●●市の▼▼チームの皆さんです。ご来場ありがとうございます。株式会社(なになに)はあなたの水回りのケアをお手伝いさせていただいております。(なになに)提供キッズケアでした!」
みたいなアナウンスを入れる。そうすると多分一口スポンサーまでは出せないけど、地域貢献を含めてのスポンサーとしてチケットが販売でき、また、無料と言っても金銭の出口が明確になるので、三方一両得かなあと思ったりもします。
c.協力
実際これも行われているケースですが、地域の大会にセットする形での開催によって、使用不可能な会場が使用可能になるような場合です。
実際多くの体育館では学校教育や練習などにおける体育館利用、つまりは無料入場での利用しか想定されていないため、有償利用に関しては条例の定義がなかったり、あるいは商業利用については特定の営利企業の使用であって、公共の利用とは言えないなどの前例主義で、利用できないケースもありますし、利用できたとしても、著しく高い(20倍以上になる場合もある)現状があります。
兵庫の昨季の西宮開催も、体育館の商用利用規程がなかったために、スポンサー買い取りという形で無料試合になりました。(無料試合が多いリーグにはそういう事情もあります)
また、無料試合と言っても、施設・座席の設置、広告の設置、撤収、警備などの費用は別途かかります。bj大阪の2年目の大会場の時は、会場費を除いて上記コストが2日で300万程度かかっていたと聞いたことがあります。無料開催なのでコストがかからない訳では無いということです。だから、あえて無料開催で宣伝しない、というやり方する企業チームもあるわけです。
例えばそういうところでの協力とか、あるいは前座試合との併催などで無料入場するというのは、個人的には納得できるものです。違う形で対価を払っているとは言えますし。そういう競技内での協力関係が必要かなとは思います。いわば村祭りのような流れにならないと盛り上がることがないのかな、というのがバスケット興行を7年見て来ての印象です。
2.満員感
実際のところ空席が多いというのは、興行的印象が悪くなるのは正直なところで、日本人の傾向とも小生は思いますが、自分がどう楽しむかより周りにどう思われているか、見られているかを気にする傾向が強いと思いますので、中には客入りだけですべてを判断する方も出るでしょう。ただ、満員感を演出することが主目的になった場合、結局招待券依存を呼んでしまうのではないか、というのが小生の見解です。
バスケットに関わった人は見に行けば面白いからまた来ると思いこみ勝ちですが、実際そうかはわかりません。実際20年以上前に初めて小生が(国内の)バスケットを見に行ったのは代表の試合でしたが、そのあと10年以上会場に足を運ぶことはありませんした。ちなみに招待券でした。
当時はそうした試合でもスポンサーが招待券の応募をかけて、1週間くらい前に当落が往復はがきで返ってきて、実際何名が当たったかもよくわからないようなものが(今思えば)多かったように思います。企業がスポーツを多くスポンサードしてくれていた良い時代でした。
現実問題として、それが立ち行かなくなり、親会社があるにせよプロ化という流れができ、場合によっては親会社すら無くなることも珍しくなくなりました。そうなるとそうしたスポンサードの費用の影響は、選手を初めとするチーム、あるいは観客(スポンサー含む)のどこかか、あるいはすべてが何かを負担しなければならない。そういう時代に入っています。
その中での満員感の創出ということでは、とあるチームが使わない座席に黒幕を敷いて座席を詰めさせたり、ということをしていましたが、それでも初年度の2月頃には有償入場者が満員で1600人の会場ですら2~3割なんてこともあったと言います。
結局招待券の配布は4年目まで続くことになります。
5年目にそれを子供券以外カットして、創立以来最高のチケット売上になったと言います。ただ観客数自体は減少しました。
プロ野球の89年のオリックスも、招待券をカットして、2割観客減少の8割の入場料収入増になったという事例もあります。
無料券を先に挙げたJ新潟のようなケースとは違い、当座満席にすることが主目的で配り続けることで、成功した例はとんと聞きません。あれば教えていただきたいですし、成功させることが出来るなら成功させていただきたいです。個人的には多分、強固な親会社がなければ成り立たず、それは実業団チームの色を濃くするように感じます。
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結局のところ、その方のツイートの中でこどもに夢を持たせるのであれば2階席ではなく1階席のような内容もありました。付き添いの費用、交通費も必要とか、そんなことは分かっています。でもそれは「こども」を人質にとっていないでしょうか。自分の不満をこどもの立場で代弁するというのは、良くある光景です。こどもも大人も、1人の人間です。
過去にターゲットなく無料券を撒いても来場すること自体がコストだから来ると限らないとも書きましたし、Bsが大阪ドームに主会場を移転した時は、撒いた数万の招待券の内開幕戦に消費されたのがわずか500枚だったというようなことも書いたことがあります。そうなってくると招待券のための座席管理という本末転倒なことが起きます。
それでもプロ野球チームを持つ企業が出続けるのは、国税庁通知の「会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金(野球事業から生じた欠損金に限る。以下同じ。)を補てんするため支出した金銭は、球団の当該事業年度において生じた欠損金を限度として、当分のうち特に弊害のない限り、一の「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとすること。」という一文が根拠です。税制上のメリットをもっているからです。
そういう特例をスポーツ全体で持てるような法改正や、会場の使用に関する優遇などを得る課程な訳です。それをすべて与えよ、という主張には、疑問を持つわけです。そして、あなたが対価価値が無いと思うものに、スポンサーがお金を払うのか、という課題が突き刺さります。
それにR25などのフリーペーパーもリーマンショック以降存在感を失わせています。バスケットに限定しても雑誌”Free Bas”等もがどうなったかもご存じでしょう。こういう景況感で失われてしまうのが、「フリーミアム」が示してきた現状のような気が自分にはしています。
bjリーグでは2年ほど前に、入場料収入とスポンサー収入はほぼ等価になると言われました。個人的には他の競技などを見ても、親会社を除いて、多くてスポンサー収入は入場料収入の2倍までではないかなと思います。つまり財布同士は関連性があります。
それをどう大きくするか、ということにもっと協力関係ができればいいのに、と思います。また、残念ながらそれに価値があって欲しいとお金を出している「一部のマニアのものにチームがなっている」のであれば、それは価値を認めている人で共有されているに過ぎないのではないかという側面もあります。
それを「マニア」と切り捨てるのであれば、敵を作って狭いバスケットボール界でなわばり争いをしているかのようで、ばかばかしいです。そういう人達がどう共働できるか、ということが価値を産むのになあ、と言う気がしています。
多分、この文章をお読みになられるでしょうから、その方に伝えるとするなら、小生の見解を理解してくれとは思いませんが、そういう見方の人もいたりすること。その上で例えば、こどもを一度無料で触れさせてあげたいとするにせよ、どうすれば多くの人を上手く巻き込んで、みんなの顔を立ててみせてあげられるかを考えるのも、大人の仕事だと思うのです。そのように、みんなを巻き込んで価値を最大化できるために動ければいいのになあと思います。