選手会がスト権を確立したとのことです。過半数で成立で、752人中661人の賛成があるため、現状でも成立しているという認識によるものです。機構にも通達したとのことです。(ニッカン)
しかし、こういうことは考えているのでしょうか。
「実は、プロ野球がなくても構わないんだ」とファンに思われないかどうか。
実際、ジャイアンツやタイガースの圧倒的な支持率の背景には、それほどコアではない、球場にも年1回足を運ぶかどうかという、そう言った多くのファンに支えられていて、それがテレビ視聴率に繋がり、収益の柱となっている側面があります。
この前提が、昔と違い娯楽の多い今、簡単に壊れてしまう可能性が十分にあると思います。実際に、選手会署名も有権者の1%にも及んでいない状況で、本当の国民的娯楽の危機であるならこの程度の数では済まないのではないか、と思います。
プロ野球の人気というのは、あるいは野球というスポーツの人気は、そこまで強いものではないように私は思っているのですが。それに、今年の高校野球は、20年前と比べると、ぱっと見8割以上埋まったのが、PL学園戦の1試合のみで、かなり低くなっているように思います。
また、スト権の行使の場合、賃金支払い義務がないことを、選手会は選手に伝えているのかは懸念します。実際これらのことに無頓着な方も多いようですが、スト中の賃金支払いは、組合活動を使用者が経理的に支援することを禁じている、労働組合法7条3に抵触します。
加えて選手は、「作業場」である専用球場等、あるいはその付帯設備、球団の練習場なども使用できなくなります。それらリスクも考えておられるのか、懸念します。
また、指名ストについても、労働争議が提案され、スト開始までに交渉が行われておれば、ロックアウト(完全締め出し)が可能になります。そうなると指名ストという形式も取ることはできないと考えます。指名ストに言及していた段階で、選手会は非常に認識が甘いとしか私には言えません。また、これら労働争議について、ロックアウトには交渉態度が問題とされるのですが、経営の根幹に対するものが交渉内容となるため、当初より妥結は難しいと考えるのが必然かと思います。そのため、交渉態度については、経営側の提示した「雇用が継続される」との提案がされているのは、有る意味非常に「巧い」のです。
ロックアウトになった場合、年俸数百万の選手はおそらく窮地に立つと思います。しかし、選手会はそれをサポートできる資金がありません。また、収益システムもありません。募金を募って集まるのかどうか、と言う程度にしかならないように思います。署名の「数」の問題がそこに出てくるのです。
どっちに転んでも平坦じゃないですね。
参考:
神奈川県地方労働委員会 福島県地方労働委員会
付記:
近鉄東京応援団主催によるデモが行われたようですが、プラカードの字体が「2,3人が書いた物を持たせました」って感じなのは、印象悪いですね。残念ながら。
だって、受け身でやってるように見えるから、ね。(#)
# 12:10追記
なお、労働法上の労働協約に「統一契約書」が該当すると言う場合は、事前に選手はコミッショナーの調停を受けた上で、スト権を発動する必要があるということになります。その点で、今期中のストライキは行われたとしても、かなり遅いか、シーズンオフまでもつれ込む可能性があります。またそうでない場合は選手会側の交渉態度が問題とされる可能性があります。