大分と前の話になりますが、不動産鑑定士協会からどこで仕入れたのか分からない情報を流用して、私的情報を「正しい鑑定のために出しなさい」という郵政公社メールが届いたと言う話。微細に書きたいと思ったのですが、あまりにも込み入ってしまうので、時間をかけた割には簡単な記載にさせていただくことをお詫びします。(あらすじは ここ を参照してください。)
さて、返答の要旨なのですが
1.無記名で出したことは申し訳なく、担当者に厳重注意をした。
2.ただ、個人情報保護法によるプライバシーポリシーは、ホームページに記載してあり問題はない。
3.取り扱いについては法規制に抵触していないと考える。
4.入手した情報は登記の公示から使用しているもので、問題があるとは考えない。(不動産鑑定士業務としての法規制上も問題がない)
5.無礼をお詫びし、ご回答を求めたい。
ざっとこういう感じでした。
ただ、この問題点は大きく2つあります。
a.プライバシーポリシーを公示しているという送付文中の記載がないにも係わらず、情報提供を求めている。
インターネットのアドレスについて文中に記載がありますが、取得した情報の利用制限等についての記載が適切な形で文面中にありません。「おそらく遵法対応なのだろう」としか読めず、個人情報保護法に関する記載は一切ありませんでした。
b.公示された情報を用いれば何をしても良いのか
高額納税者や住民基本台帳の閲覧(コピーまで可能な場合がある!)ができれば、それをマーケットデータとして使っていいと公言しているようなものです。ちなみに先だって住民基本台帳ネットワークから外して欲しいと求めた2件の訴訟で、1件は外すのが適当という判決が下りましたが、もう1件は「(住民基本台帳は閲覧可能であるから)住所・氏名の本人情報の秘匿性が高いとは言えない」との理由で原告の請求を棄却Sいたということがありました(参考:東京新聞)。
要するに、自己のプライバシーポリシーを書面上で開示せず、しかも公示されている情報を元に適切に扱っているというのであれば、「公示内容はプライバシーではない」ということで、更に極論をすれば、交通違反で行政処分を受けたり、不動産を売買したり、訴訟を起こすことによって出される個人情報は「住所と氏名くらいなら自分の利益の範囲でどのように使ってもいい」と述べているのと同じことです。しかも立法府が部分的にそれを認めているということでもあります。
要するに、個人情報を秘匿したいのであれば、行政などが公示するようなことは何もするな、ということで、これが個人の自由を保障している国なのか、と疑問を持ちます。
いずれにせよ、全く気分の良い話ではありませんね。
TB – own 2005/6/2 兵庫県不動産鑑定士協会さんからお返事…しかし。
“不動産鑑定士協会「公示内容はプライバシーではない。」” に1件のフィードバックがあります
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政府が今国会で提出を予定している法案として、
「人権擁護法案」なるものがあり、
これを巡って与党内対立が生じているようです。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20050528k0000m010186000c.html
人権擁護を推進する趣旨とはいえ、
公的委員会を新設し警察の捜査権限をも越えかねない
広範な強制力を、曖昧な要件の元に新設する案となっており、
提出前法案でありながら、法案をネット上で取りざたする動きも見られます。
しかしながら、法案を作る者も反対運動を展開する側にも、
(法律の留保に通ずる、よく言われる法治国家では無く)
法の支配の概念を身につけているように見えないのは、実に残念です。