久々のNHKネタです。
デジタル放送にはB-CASカードというものが必要で、それにより著作権管理をするというのが名目になっています。そして、デジタルコピーは「1回のみ」であり、例えばHDD/DVDレコーダーで録画すると、HDDに記録してDVDにコピーすると、HDDの内容を自動的に消去するような設定になっており、そのDVDからのコピーはできなくなっています。
さて、問題は、NHKの放送にそれをする権利があるのか、ということ。
名目上、民放は営利企業ですから放送の2次使用について収益が出る以上、それを避けようとするのは至極当然なこと、という「側面もあります。」しかし、NHKは営利企業でしょうか?
放送法9条4項には、(放送事業において)営利を目的としてはならない、とあります。また、放送法第9条に記載された「日本放送協会が行うことができる事業」にはソフトウェアのリセールは含まれず、その為、NHKエンタープライズを設立している経緯があります。NHKエンタープライズのような会社を外郭団体としておくことについては、下のTBで述べておりますので省略します。しかし少なくとも、日本放送協会受信規約、および放送法に著作権管理を行うことについて定義されていない以上、このようなコピーガードをかけることは出来ないのではないかと思われます。
またそれをかけることによって、NHKエンタープライズの収益を保護する側面がある以上、コピーガードは「収益目的」でかけていると言え、NHKの放送法上の定義に違反することになります。
大体、アメリカですらデジタルTV(HDTV)にはコピーガードをかけておらず、また一時はコピー防止の為の「フラグ」を情報につけることを検討したにも関わらず(参考)、裁判によって「フラグ」をつける権利がFCCになく、かつ「フラグ」をつけること自体損害が不明確でやり方が恣意的との判断により、フラグすら立てられないことになりました。(参考)
一方の日本はといえば、メディアはDTVがコピー制限があることを表に出さず、きれいで便利とばかり伝え、デメリットを伝える中立的な報道すらない始末。家電メーカーも同様の宣伝に荷担しているという状況。
その権利が本当にあるのか、という問題を含め、一度この国の民主主義のあり方を考える機会なのかも知れません。
TB – own 2005/5/1 NHKエンタープライズの謎
– own 2005/4/30 NHK集金を断る
「NHK:デジタル放送コピーガードは「放送法違反」?」に15件のコメントがあります
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こりゃまた入れ食いの釣堀ですね(笑)
明日あたりの日刊ゲンダイか夕刊フジにそのまま掲載されてるかも。
コピーワンスについて考えてたら、少なくともNHKに関しては違法性が高いという
結論に60秒で到達してしまったことからつらつら書いた内容なんですよ。。
ただ、消費者の権利意識がない、要するに権利は勝ちとるものだ、という意識に
ついては日本とUSの差が象徴的に現れた事象ですね。
パクり上等。でもメール位くれよなぁ。逆取材したいこともあるし(苦笑)。
残念ながら、国民に殆ど知らされぬまま、法的解決は図られてしまっています。
簡単に言えば、(市場実態はともかく)技術的に無劣化コピーが容易であり、
違法コピーの(VHSやDVDへの劣化済みコピー)実例があるという理由で、
営利目的でない無料(公共)放送であっても、デジタル放送では
スクランブルやコピー制御をかけて良いとされてしまっています。
まず、この問題は2段階に分けられます。
1.有料放送以外でスクランブルをかける(B-CASの技術的必要性根拠)ことの合法性
2.有料放送以外で、コピー制御をかける(コピーワンス)ことの合法性
1.につきましては、2002年6月の総務省令の変更により、明示的に合法とされました。
http://www2q.biglobe.ne.jp/~tetsue/copyguard.htm
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020612_5.html
2.につきましては、デジタル放送チューナとハードディスクが一体化された
「蓄積型放送」をネタに、これまた技術的理由という建前で、
デジタル放送であれば、無料放送であろうと、有料放送と同じ方法で
コピー制御を行って良いと明示的に総務省が定めてしまっています。
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/joho_tsusin/010625_2.html
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020124_1.html
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020313_1.html
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20031117/cci.htm
>Teruさん
内容を拝見しましたが、実際には、これについてコピー制御をかけることについては
放送事業者に権限をゆだねています。コピー制御可能な方式をとること自体には
小生は実は反対ではありませんが、実際全てに援用している現状は消費者利益と
いう観点からは違法性が高いものです。少なくともNHKとの「約款」に於いて、契約
により視聴者はコピー制御に同意した記載は「一切ない」のです。またその権利も
「ない」のです。
つまりコピー制御をかける違法性は放送局に責任が投げられてしまったに過ぎない
のです。
>違法性は放送局に責任が投げられてしまったに過ぎない
確かにそうですが、視聴者が放送局による録画制限に対抗する法的根拠は、
日本国内ではまず、著作権法30条となり、
この条文は「コピーガードを外していないこと」が前提になってしまっています。
(アメリカ国内でのフェアユース規定とは権利の強さがまるで違います)
従いまして放送事業者側は、先んじてコピーワンス制御をかけてさえしまえれば、
視聴者側がコピーワンス制限が一方的で
「私的録画する権利」が侵害されたと主張したくとも、
法的根拠をつぶせてしまう構造になっています。
さらに、著作隣接権の設定自体が、
それによる放送局の利益の度合い、もしくは利益を得ることが認められているかとは関係なく、
放送局に複製権の専有を認めています(著作権法98条)。
(FCCの権限が、議会からの直接委任を前提としているのとは異なります。)
ですから、仮に日本国内で争うなら、著作権法か民法の総則規定を法的根拠に、
視聴者側が、コピーワンス実施の
>やり方は恣意的で気まぐれなので違法である。
>FCCはフラグのルール作成時に、
>コンテンツの無差別配信がコンテンツ企業に損害を与えるという証拠を提示していない。
>仮に証拠があっても、フラグはその問題を解決しない
ことを自ら立証することで実質的根拠を加えて、裁判官を説得することになってきます。
これは相当、困難だと思います。
>Teruさん
この専有と30条の私的複製の問題は、DVDソフト等の場合やコピーガードのかかった有料放送では過去判例もあろうかとは思いますが、無料放送では逆説的に言えば判例がなく、訴訟が起こってみないと分からない問題とも言えます。判例はあくまでもその事象にのみ有効なものですから。
しかしながら実際に裁判となった場合、日本のように三権非分立の国で適正な判決が下るかどうかはもちろん自明であることも承知しております。
ただ、NHKに於いては、基本的に日本国内に放送を普及させる目的で設立されている以上、放送内容が最配信されても問題はないとも言えますし、また、放送法規定では「営利企業でない」筈で再配信で被害を受ける筈もない…筈なのです。
ですからNHKが当該ガードをかけることは問題であると思わざるを得ないのです。
権利主張により儲かるのか?
という著作権の実質的根拠からすれば、おっしゃる通りだと思います。
ただ、日本国著作権法では、
より形式的な基準で著作権や著作隣接権を認めているため、
形式的違法性を根拠に、
NHKがコピー制限を、視聴者に課すことの違法性を問うのは厳しいのではないかと思います。
個人的にはそうは思わないのですが、それは消費者の権利意識が低いことによる、司法判断の追従が問題を大きくしているように思います。結局のところ取り繕った法制がこのような問題を起こすのしょう。
実際のところ、URLを記載された中に、消費者への不利益を伝えよという家電業界の意見がありますが、NHK/民放/総務省とも全くそれら行為を行っていません。それどころか家電業界すら行っていません。日本のアセスメントなんてそういうものです。
じゃあ、実際どうだと言われれば、転がっているコピーツールでCGMS-Aなんてかんたんに外せる、ということも、知ってる人は知っていることですから、その点で権利意識よりは実態を見て考える人が多いのでしょう。
店頭の店員説明ではそうかもしれませんが、
カタログ・取り説・コピーワンス導入時のスポットやデータ放送では、
http://panasonic.jp/support/tv/dtv/copy.html
http://www.d-pa.org/copyctr/index.html
録画された番組は、他のデジタル機器へのダビングはできません。
などと書かれています。もっとも、小さな文字で付属的に書かれている
これら説明を意識して読むのは「知っている人」でしょうし、
知っている人は法体系の再構築よりも、
コピー制御を回避する方法探しに努める傾向がありますから、
権利意識が歪んでいるのは、(現状の特別法で権利に大差をつけられているとはいえ)
お互い様という部分もあるでしょう。
PL法による注意書きより小さい字で、と言う時点でアメリカなら「アウト」なんでしょうけどね(笑)。まあ、MP3もアメリカの事情で考えていましたので、日本のコピー制御を知って、あ、音楽を大衆にものにしたくないのね、と思ってしまいましたってもまあ、あれですけどね。
全般を見ると、結局のところ、日本らしい歪みの出方がしていて、非常に文化の匂いを感じますね。
著作権法98条の制定時期、ひいては著作隣接権という国内法体系の由来を検索していましたら、
戦前には、粋な判決もあったようです。
http://neo-luna.cside.ne.jp/copyright/ncr31.htm
確かにそうですね。
翻って今の日本の司法は、憲法判断など裁判官の将来に影響を与える裁判では極力
違う理由を見つけて棄却することに命をかける方が多いようで。昨日の名古屋の住基ネット裁判なんて噴飯物の判決理由でしたね。
住民基本台帳の本人確認情報は以前から誰でも閲覧でき、秘匿の必要性が高くないと指摘。「住基ネットが本人確認以外の目的に使われたり、プライバシーを侵害するような危険なシステムとは認められない」
…じゃあ、二審では住民基台帳公開の違憲性も含めて問題視したら、また違う理由を出してくるんでしょうね…。
そして3年が費やされ。個に辛い国ですね。