自民党が今日、マニフェストを発表。
やはり、財源に関しては「全く不明瞭」。
どこをどう読めば2010年半ばに2%成長を達成できるのか、そして消費税増税の判断が可能なのか、それでプライマリバランスを改善するのか、全く読めない。

ダイヤモンド・オンラインの「経済ジャーナリスト・町田徹の眼」の本日掲載の記事は、先だっての民主マニフェストへの判で押した財源批判について、こんな記事を書いている。

自民党・霞が関に操られるメディア
民主党マニフェスト批判の本当の理由

総選挙に向けた民主党のマニフェストが大手メディアから集中砲火を浴びている。「財源が不透明だ」とか「ばらまきという点で他と変わらない」といった指摘が、そうした批判のポイントだ。

 しかし、こうした批判の本当の発信源は、実は政権の座を失いたくない自民党と、その走狗と化した霞が関の各官庁だ。劣化する一方のメディアの多くが、こうした批判の発信源やその意図を冷静に検証する作業を怠ったまま、敵役である自民党の言い分に過ぎない民主党批判を垂れ流すという致命的失態を犯しているのである。

内容を見る限り、民主党のマニフェストは、批判されているほど悪くなどない。むしろ、郵政3事業の民営化だけを唯一の公約に掲げて、郵政民営化さえ実現すれば他の多くの改革も自動的に実現できるかのような幻想を抱かせた4年前の小泉純一郎・自民党政権の無責任なマニフェストと比べると、鳩山由紀夫・民主党は様々な問題に対する取り組み姿勢を易しく説明している。そのマニフェストは、誠実で分かりやすい内容と言える。

とした上で、民主党のそれに本質的に欠けているのは経済体制の具体性と明確に切り分けている。

その上で自民党が民主党のマニフェストのあら探しを各省庁にさせた事実を以下のように綴っている。これが事実であるとすれば、官庁など改革する気は、自民党には一切合切ないと言わざるを得ない。

筆者の手許に、「関係者手持ち資料」と記された自民党の内部資料がある。20ページの小冊子の体裁で、そのタイトルは「今回の選挙は『保守主義』の自民党か、『社会主義』の民主党か、の選択である!」となっている。日付は7月23日付で、自民党が、発表前から民主党のマニフェストを探り、得た情報を元に対策を練っていたことがわかる資料なのである。

 クセモノなのは、この資料の作成者が「自由民主党 政務調査会」となっている点だ。というのは、資料の形にまとめたのは自民党の政調かもしれないが、中身を具申したのは霞が関の主要官庁の官僚たちだからである。ある有力官庁の永田町担当者は「1度ではなく、執拗に何度も、民主党のマニフェストの粗探しをするよう要求された」と、その実態を認めている。

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 民主党政権が実現すれば、改革を迫られるのが確実な霞が関の官僚の中には、こうした自民党の情報戦を「民主党政権の誕生を阻止する好機だ」と捉えて積極的に協力した向きが少なくなかったらしい。それほど積極的ではなくても、政権与党の座にある以上、無視できないと、要求に従い、民主党の粗探しにつとめた向きもいるそうだ。とはいえ、官僚の中にも「自民党には政権与党の座に君臨してきた誇りがかけらほどにも感じられない。相手を批判するネガティブ・キャンペーンばかりで志が低いうえ、それを官僚に依存するほど能力も低い」と露骨な軽蔑のまなざしを向ける者も存在する。

 ちなみに、ここで、資料に書かれた民主党のマニフェスト批判の一部を紹介しておこう。例えば、民主党が「ムダ遣いの廃止などで17兆円の財源を確保する」としていることに対し、「社会保障や、地方交付税交付金、文教関係の何を削減するのか不明」「国家公務員の人件費の2割削減というが、具体案がない」と批判している。

 年12万円支給の高校授業料の無償化でも「財源の説明がない」と反対意見を表明している。また、最低月額7万円の受け取りを保証する年金改革でも「所得捕捉のやり方を示していない」としたうえで、「財源も制度も示さない無責任な提案である」と決めつけている。この3つの例で明らかなように、馬鹿のひとつ覚えのように「財源」を批判の根拠にしているのが特色なのだ。

 ここまで記せば、問題は明らかだろう。こうした中で、多くのメディアが判で押したように「財源」を理由に、民主党のマニフェスト批判をしていることに関して、筆者は愕然とせざるを得ないのだ。

 だが、実際に、民主党のマニフェストを読むと、好感を持てる部分は少なくない。

 まず、指摘したいのは、マニフェストの冒頭に掲載された鳩山代表の「暮らしのための政治を」という挨拶だ。鳩山代表はここで、「ひとつひとつの生命を大切にする。他人の幸せを自分の幸せと感じられる社会。それが、私の目指す友愛社会です。税金のムダづかいを徹底的になくし、国民生活の立て直しに使う。それが、民主党の政権交代です」と自身と民主党の政治信条・哲学を明らかにした。

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何をいわんやをやである。
その結果が自民党の「財源なき」マニフェストである。これをメディアが批判しなければ、何がメディアに起こっているかは明白だと思う。

そんな時流に乗らないロイターが皮肉にも超・資本主義の金融関係者を中心に自民の発表を受けて両者のマニフェストを比較してもらっているが、実は民主の方が好意を持って迎えられているというのが興味深い。

良く読んでみると分かるが、自民の方の経済政策や、財源が評価されていると言っても「注釈付き」であることがポイントだと感じる(~できるなら興味深い、比較しての表現が目立つ)。

マーケットとしては行財政改革を郵政民営化を実施した上で継続することを期待して、裏切ったというイメージの方が強く、もはや自民党では変わらないし、優れていると言っても(民主党を含め財源・経済政策の)低次元の点取り競争に勝った、との認識があるように見えると言えばどうだろうか。

ロイター2009/7/31 自民が衆院選マニフェスト発表:識者はこうみる

抜粋

<似たような方向性で「大きな政府」にならざるをえないという点では共通している。ただ自民党はこれまでの実績が期待はずれだったことが信頼性にマイナスであり、その点、民主党の政策は実現できれば期待できる内容となっている。><これらの財源や行財政改革とい点では、民主党が掲げる「無駄の削減」はやってみなければわからないもの。しかし実現できれば期待できる。自民党は、財政健全化の目標はすでに後退している。郵政改革をはじめとして「小さな政府」を目指した改革路線を進めてきたはずだが、同時に発生する痛みも我慢しようと言ってきたはず。しかし途中で痛みが大きいからといって改革自体を止めてしまったも同然。こうした裏切りがあるので、財政に関しても信頼性が低いといわざるを得ない。><大和住銀投信投資顧問 投資戦略部 チーフエコノミスト 大中道康浩氏>

<自民党のマニフェストはこれまでの政策を受けたもので、不透明感につながらない。民主党は政と官の関係を見直し政治主導の体制を目指すなど新しい方針を打ち出しているため、事務方の十分な協力を得られるか、混乱なく政策運営できるかという点に不透明な部分が残るため短期的には円売り要因とみているが、自民党のマニフェストは円売り材料にはならない。一方、今の日本の閉塞状況は官主導の体制にあったともいえ、長期的にみれば民主党のマニフェストのほうが円買い材料だ。 ><みずほ証券金融市場グループ外債トレーディング部マネージャー、鈴木健吾氏>

<自民党、民主党のマニフェストでは依然、「企業に強みを持つ自民党に対する個人に強みを持つ民主党」という構図に今のところ変わりはない。株式市場へのインパクトは非常に限定的だ。> <インベストラスト 代表 福永博之氏>

自民党のそれについて<特に、「イノベーションの推進によるサービス部門の一層の生産性向上などを通じて、産業の高付加価値化を実現する」との項目について、生産性が本当に向上すれば内需が強くなり、さらにアウトパフォームが高まれば国内に資金がより多く流入してくるだろう。その点で具体策を示すなど一段踏み込むことができるなら興味深い。><ドイツ証券チーフエクイティストラテジスト 神山 直樹氏>

<自民党の政策は、部分的な消費の下支え効果にはなるが、広い範囲でカバーしているわけではなく、少子化対策に関して限定的とみられる。><民主党の公約は基本的には行財政改革と埋蔵金の捻出でほとんどをカバーする形になっているが、なかなか現実的には難しいのではないか。自民党は景気が回復したらという条件付きで消費税の引き上げを盛り込んでいるが、もう少し踏み込んで欲しかったということを踏まえると、点数としては65点程度の評価となる。><今回の政権公約は両党とも国内の成長対策が中心。これだけ経済が多極化する中で、経済対策の世界戦略が欠けており、そこの部分は両党とも厳しい。> <三菱東京UFJ銀行 企画部 経済調査室長 内田和人氏>

自民のそれが成長戦略で現実的、財源が増税を含め議論しているので高得点、家計支援は民主が評価できるとしている中で<行財政改革については、民主党の方が政治主導で物事を決めようという心意気を示しており、評価できる。自民党は現実的だが、民主党の方が物事が変わる可能性がある。><みずほ証券エクイティ調査部・シニアエコノミスト 飯塚 尚己氏>

投稿者 wolfy