trackback – tsasakiさん:[PTSD診断基準(DSM-IV)]
PTSDについてのガイドラインでは、DSM-Ⅳの基準に合致していればPTSD、というのが日米共の基準ですが、実は日本というのはこの種がガイドラインの「国際化」には重要な国ではなくて、米欧が合致すれば、国際ガイドラインになってしまう、というのが常です。現在のところ、当該疾患に関して、米国ガイドラインに欧州が合致しているかどうか寡聞にして存じ上げないのですが、現在のガイドラインが米国を明記している現状では、世界のガイドラインとしては用いられていない、とするのが妥当だと思います。
(例として、NHLBIの気管支喘息のガイドラインについては、統合され、GINAのガイドラインとして再作成、というようなものが通常の流れでしょう。なお喘息については日本版のガイドラインが別個になりますが、これは、抗アレルギー剤に諸般の理由で重きをおいているものです)
なお、日本のガイドライン(日本トラウマテック・ストレス学会のガイドライン)では、PTSDは1ヶ月以上継続することが条件で、それより速くかつ重症に症状が発生したものをASD(急性ストレス障害)と定義しています。
これより、UAEではPTSD、日本帰国後の検診ではASDと診断されているもので、問題があるとは考えません。
なお、ガイドライン自体が米国で出てきた理由の一つに、医療訴訟の問題があり、ガイドラインに従っていれば、広範に現在の医療水準での適切な治療法を提示し、またそれに拠っていることを根拠に、適切な治療を行ったと主張できる、という背景があることも忘れてはいけません。
おそらく親族は、これらについて適切な知識を持っていたとはあまり考えられませんので、医師診断の内容をそのまま提示したのではないか、と推測します。
余談ですが、刑法134条では、秘密漏示についての記載があります。
「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職に在った者が、正当な理由がないのに、その業務上取扱ったことにより知り得た人の秘密を漏らした時は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
但し、135条の規定により、告訴をもって罰することになっており、被害者が提訴することが必要なのですが、いずれにせよ、本人・親族等の同意なしに病状を公にすることは、その医師が刑法犯に問われる可能性があることは、長嶋さんのケースも併せ、頭に入れておくといいでしょう。今回の場合は、親族から公表されているので、問題はないということです。
一応、医療関係のはしくれとして、誤謬の可能性があるため、コメントさせていただきました。
#10:03追記
たまたま見つけましたので、ASDに関する記載にリンクさせていただきます。米国ガイドラインに拠って記載されているので、日本での一般見解としてもフェアではないかと思います。
いずれにせよ、ASDからPTSDへの移行率は米国では30~50%とのことですが、今回のケースは、「国内的要因」により、確率がかなり高くなるような気がします。
“PTSDとASD(急性ストレス障害)。” に1件のフィードバックがあります
コメントは受け付けていません。
余談ですが、この種の業務関連の記載をするときに、どうしても「米国」と記載してしまいます。他ではUSと書いているんですけどね…。
学会などで、「米国」の乱発を聞くので、どうしても、ということが背景かな…。今月は3日間、呼吸器関連の学会会場におりましたもので。