日本って臨床試験というと「モルモット」って人が多いので、その関連の話を。
抗がん剤とか薬理的に身体に非常に強く作用する薬剤を除いては、実際には第Ⅲ相と言われる臨床試験は、安全性については大きな問題はないものが多いです。また、些細な有害事象(最近では「副作用」とは言いません。どんな悪い事でも症例報告書等に記載しないといけません)でも、記録などに残す必要があって、厚生労働省もその点については非常に強く指導しています。単に過去の事件の責任を回避するため、という話もありますが、日本の試験はUSと比較しても非常にこの点は厳しいようです。
また試験には実施計画書(プロトコール)というものがあります。で、これで事前に予想されることについては、対策を行うことを定義しています。以上のことから、問題が発生したとしても、対策されずにもみ消す、ということは無いと考えて良いと思います。
しかしながら、どうも「モルモット」イメージが強いことが、患者さんの印象を悪くしているようです。確かに長期投与試験なら少々危険性は増えますし、先に挙げた薬効によってと言う面も確かにありますが、問題が少ないと思われる薬剤でも「家族による拒否」が多いのは正にその問題と思います。成人でも結構多いのですよ…。
またそれ以外に問題なのは、お医者さんも患者さんも時間をかけない、ということですね。説明しないし、説明を聞かないとか聞きたくないとか。そういうことが多いんじゃないか、と思います。
あと問題として出てくるのは「国民皆保険」でしょうね。実際に3割の医療費しか支払わないので、その疾患に関連する治療費が試験を依頼する会社から出るのですけど、それがあまり大きい額にならないことと、1回当りの試験の為の来院や、検査の為に別途お支払いする費用が7,000円~10,000円というのもメリットが少ないと思われてしまう理由かも知れません。USなら保険は低所得者・高齢者の方以外は個人、または企業払いですから、入ってない人はこうした試験に参加するわけですよね。
また、試験には先ほども申し上げた「実施計画書」で併用してはいけない薬剤なども書いていますし、また、試験中に、追加で売薬でも飲もうとする場合は、何か追加で問題が起ったのかを確認する必要があります。それにもし飲んではいけない薬を飲んでいて、試験が継続された場合、その方のデータが採用されない可能性もあります。ですが、これらのことを説明している筈なのですが、守られない方が結構多いのも特徴的です。話してないのか、聞いていないのか…ここでも「時間」が関連してきます。
こうやって書いていると、お医者さん、患者さんとも時間がないことの問題が出てくる訳なんですよね。なんで先生方がこうも忙しいのか…実は医療制度に問題があったりするんじゃないか、と思っていますが、それはまた今度。