社会のコスト。

By | 2004/10/30

今週のイラクでの邦人誘拐事件での「殺害」報道でも、中越地震での誤った「3人救出」報道でも、延髄反射的に事実確認をせず、センセーショナリズムに走るメディアが、詫びもせず堂々の誤報を短期間に繰り返す。

だけれども、これは当たり前のこと。だって彼らの世代は「与えられた答え」を導出するだけの教育しか受けてこなかったから。だから聞いたことは「全部正しい」。blogに於いても同じような「報道」を繰り返す人たちも同じようなものだろう。推測は推測、事実でも誤認の可能性もある。しかし、ある犯罪の、主犯の心理が報道されている通りなんてどうしてそう思うことができるだろうか。しかし、大方の人はそう。「複数のソース」と言ったところで、全て時事か共同の「転送」であるかどうかも気付かない。だからカンタンに誤報をする。自分たちが家族らの心情を引っかき回してるなんて思わない。

だから、ある意味これも社会が自分たちのシステムに関して無関心であったため、対価として支払う「コスト」。頼れないメディアに振り回されて、例え戦争に巻き込まれることがあったとしても、それは自分たちの責任。でもそういう教育を受けていないからわからない。それも「コスト」。

イラクへ行って誘拐された今回の当事者の行動を責めるのもいいだろう。イスラエルから入国したなんて、アラブの人間からすれば、どう見たってスパイだ。でも彼は自分はなんとかなると思っていった。日本人はアラブ人がどういう精神構造をするか、その基本となる歴史もろくすっぱ学んでいないから。だから彼の無知で起こったことも、社会が「コスト」として支払う。それに自衛隊を送った政府を、形式上であれ我々は支持しているのだし、それでこの種の問題が起こる可能性は予想できたこと。さらには、ヨルダンの国境で入国を停めるための「コスト」も省略。だからそれに付随する「コスト」と言ってもいいだろう。ある意味政治に無関心であった「コスト」。

膨大にふくれあがった財政赤字が国民の預貯金残高を食いつぶしても、それは社会の「コスト」。でも現在の年金受給世代が等しく責任を負わないのは、社会の「コスト」の転嫁の不備だろう。特に最低限の生活を保障している国民年金と違って、厚生年金はね。

プロ野球も同じ。問題はあったのに、とりあえず今あるからいいやというレベルで、「12球団が永劫続く」と誤解して、組織的不備などを特に声も上げず放置した「コスト」。しかし「借りは返さない」ことを選択し、それにメディアも乗っかった以上、ボクシングが国民的スポーツであった過去と現状のようにならないとも限らない。でも、プロ野球がそうなるとは考えない。堕ちていって初めて分かる「コスト」。でも認識できない国民を産んだ教育をしたことの「コスト」でもある。

社会の目に見えない「コスト」を軽視して、目に見える金銭的な「コスト」ばかり重視した。その結果が出ているだけのことが如何に多いか。そして、それを認識できない人も。一つの事は他に繋がっていく訳だから。想像力を産まず、出題者の意図した回答のみを求める教育の「コスト」。長期政権の為政者側にとっては有用だったかも知れないけどね。元々の定義さえ決めつけてしまえばいいのだから。

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3 thoughts on “社会のコスト。

  1. 旨樫いさこ

    旧PC最後の投稿です。

    …残念ながら、こちらで叩いてきた氏が、その教育制度内の成功者(高学歴・成績優秀で、校則に疑問を持たず、人にも守らせる『良い子ちゃん』)でした。以下エントリーで、『パロディをマッド・アマノ氏に頼っている内』とありますが、時事漫画があの程度のレベルで『通用』しているこの国の未来は暗いですね。

    自分も、氏に印税を払ったコストを今支払っているわけですが…。今までいろいろお世話になりました。新PCでは違ったコメント出しますゆえ。

  2. wolfy

    どうもお疲れ様です。PC置換大変ですね…と言っても、小生も近々Latitude C640/610→D800への入れ替え。ソフト全部揃ってたっけなぁと心配です。

    旨樫さんのおっしゃる「彼」ですが、なんで珍重されてるのかわかんないですね。
    ある意味マーケティングだけで出てきたというか。
    高岡凡太郎氏の方がよっぽど面白いのですが、
    大阪という理由だけでメジャーになれないとしか思えないのです。

    いや、プロ野球・メディアの問題もここに集約できるのですが、
    みんなそれには触れないのに何の理由があろうか、とも思うのですが。

    お互い新PCでは少々明るめの話もできますように。

  3. 旨樫いさこ

    高岡氏メインの話ということで。

    大阪日刊の80年代作品単行本読みましたが、専門誌で連載してから娘さんが生まれて(詳しい方に話を伺ったところ、これがきっかけで『毒が消えてしまった』)、私事ネタが多くなって雑誌では打切、『ムスメ日記』に至ったわけで。数年前まで週刊ベースボールでパ・リーグ4コマ連載を持っていたのですが、三輪田氏ネタで『お詫び』が出た後打ち切り、結局4コマはマスコミに強いW大出の、『彼』だけになってしまいました。

    いしいひさいち氏も、大阪出(出身地は岡山県)と『マスコミ嫌い』もあって、作品の出来とまったく関係なく、露出度では『彼』に劣りますし。ジブリからの『恩恵』は、Sプロデューサーをネタキャラに貰えた位でしょうか。S氏も、今回で『芸能人偏重』のツケが回ってきそうですが。

    (データ移行とモニター調整中)

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